旅行すると必ず太る

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ポケットモンスター ココ

を見たよという感想文です。

※劇場版はミュウツーリメイク以外、アニメは一期の途中まで履修済み。

 

開幕からザルードたちの掟の歌の迫力に引き込まれる。力強い歌に乗せて、この森で頂点に存在する存在としてザルードは描かれる。他のポケモンとは仲良くするどころか、きのみを奪い合ってすらいる。ポケモン同士は仲良く暮らす描写が多い中珍しい描写に感じる。

そんな中、ココは他のポケモンに手を差し伸べ、ポケモンたちから友好的に接されている描写がされる。とうちゃんザルードはココを拾った時点で掟に従い群れを抜けているが、ココとは対照的に他ポケモンとは接点が少ない。群れを抜けた時点で「力こそパワー」なザルードらしい振る舞いをやめているが、周りからは従来と同じように扱われているようだ。この時点でココはザルードとしての要素以外も持ち合わせていると示されている(観終わってから気付いたが)。

 

サトシに助けられて人間の街に入る事になるココ。初めて見る生き物と街並みに戸惑いながらも、ポケモンを助けたことでサトシや街の人と交流していく。ココとサトシはお互いの言語を理解できないが、人語は話せないけど理解は出来るピカチュウが橋渡しとなりジェスチャーも交えて理解を深めていくシーンがとても良い。

街でのシーンは人間の世界のためか、ココの言葉はザルード語としてしか表現されないし、心境の独白などもない。見知らぬ世界で何を思っているんだろう?楽しそうだが寂しくないのだろうか?と少し心配になる。というかココ、好奇心旺盛で滅茶苦茶適応力が高い。すごい。

 

森へ帰るととうちゃんザルードと再会する。ここでようやくココが街にいた時の心境を知ることが出来る。自分は人間ではと尋ねるココ、ポケモンだと言い返しながらも知る限りの情報を与えるとうちゃんザルード。2人とも感情が昂ることはあれど、落ち着いて話し合えている。

どうしてだろう。もっと取り乱すと思っていた。今まで見たこういう話は大体この後泣き喚いたりしてたよな…そういうの好きじゃないんだよな…とビビりながら観ていたけど感情的すぎるシーンが無くて非常に楽だった。とうちゃんははココがどうしたいかを、ココは今まで話せなかったとうちゃんをお互いに尊重していると感じた。

 

自身の出自を追う事に決めたココ。追いかける中で今回の悪役と遭遇するが、ポケモンには珍しく純粋な外道であった。いいぞもっとこういうぶっ飛んでる奴出して。山寺さんの悪役ほんと好きなのでお願いしますマジで。ロケット団もいい働きしてて結構好き。義賊めいてるよりはコミカルにやな感じって叫んでる方が見慣れてるけど、これはこれで。

 

悪役との戦いでとうちゃんザルードが負った瀕死の重傷を、ココが特別なザルードしか使えないわざで癒す。正直言うとこういう話は好きじゃない。奇跡です!奇跡が起きました!って今までのポケモン映画で見てるから食傷気味。

でも今作では奇跡ではない。ポケモンしか使えないはずのわざをココが使えるのはココがポケモンである証明となるし、特別なザルードであるとうちゃんが使えるわざをココが受け継いでいるのは親子の証明でもあるのだ。奇跡ではなく、ココがとうちゃんの息子であるからこそ生し得たことなのだ。

ココを見た方々の感想で「ココは人間でもポケモンでもある」と言われていた意味がここでわかった。奇跡だったとしても、いきなり出てきた伝説のポケモンがなんとかしてくれました!というお手軽奇跡ではない。意味のある奇跡だった。

 

物語の中でココは常に何かの間を取り持つ。ポケモン同士の喧嘩の仲裁、街で暴走したポケモンを宥めてトレーナーの元へ戻す、人間に気づかれず被害を被りそうになったポケモンを助け出す、人間とポケモンで協力して森を守る…。結果としてザルード達は掟を見直し森の頂点に立とうとする振る舞いをやめ、とうちゃんザルードを群れに呼び戻し他ポケモンと友好的になる。人間とポケモン、両方の性質を持つココだからこそ良い結果を出せたのだろう。

セレビィが未来から運んできた卵からとうちゃんザルードが生まれたようなので、きっかけを作ったのはセレビィかもしれないが…。

 

私は捻くれている。親子関係に関しては特に捻くれている。自身の親に対しては未だにもう少し良い扱いをしてくれれば…と思ったりあまり上手く関係を築けていないと思っている。今作の「俺は君のとうちゃんだ」なんてCMソングの最初はうわ…と思っていたし、劇中でこの歌詞に合わせた演出がされた時は「はいはいやっぱりね」と思ってしまう面倒な奴だ。

つまり今作のような話は苦手なのだが、それでも良い話だなと思える説得力があった。とうちゃんザルードがココを大切に想っている描写が丁寧にされていて、素直に話を受け入れられた。話のテンポも良く、無駄な演出も無く、何より純粋に話が面白かった。アクションシーンではめちゃくちゃ動くし迫力がすごい。つだけんザルードととうちゃんザルードの激アツ友情もあって最高である。子どもも楽しめるけど大人の方が刺さると思う。正直ポケモン映画ではベスト3に入るぐらい好きになってしまった。

 

アニメのポケットモンスターシリーズで主役のサトシだが、今作は主人公ではない。重要なシーンで活躍はすれど、今作はポケットモンスターココ。ポケモンであり人間であるココの物語なのである。サトシが主役の話も好きだが、ポケモン世界に生きるそれぞれを取り上げた「みんなの物語」や今作のような映画がもっと観たい。